日本財団
JITI鉄道防災ワークショップ2018「ハリケーン等の災害に対する鉄道防災対策の強化」
主催 運輸総合研究所 ワシントン国際問題研究所(JITI)
日時 2018年12月6日(木) 13:00〜15:30
場所 The Hay Adams Hotel (800 16th St NW, Washington, DC 20006)
参加者 米国連邦危機管理庁(FEMA)、米国連邦鉄道局(FRA)・米国連邦公共交通局(FTA)ほか米国運輸省(DOT)、ワシントンDC運輸局、全米公共交通協会(APTA)、世界銀行、在米日本国大使館等

概要

(1)運輸総合研究所ワシントン国際問題研究所・土屋所長が、以下の通り冒頭挨拶。

  • 米国では、2017年に複数の巨大ハリケーンが襲来し、ハリケーン被害額の上位5つの内3つを、2017年発生のハリケーンが占めることとなった(@カトリーナ(2005)、Aハービー(2017)、Bマリア(2017)、Cサンディ(2012)、Dイルマ(2017))。2012年には、ハリケーン「サンディ」がニューヨーク市を直撃し、ニューヨーク地下鉄等の広範囲での浸水等により経済・社会活動に甚大な被害を与えた。さらに、2018年には、カリフォルニア州で、大規模な森林火災と豪雨による地滑りが発生し、深刻な被害が生じた。
  • 日本では、2018年の西日本豪雨により広範囲で甚大な被害が発生し、鉄道においても、線路の土台や鉄橋の流出等による多大な被害が生じた。また、2014年の集中豪雨による広島土砂災害、2015年の台風・前線の影響による鬼怒川氾濫など、雨の降り方が局地化・集中化・激甚化している。さらに、2011年に東日本大震災が発生し、地震と津波により広範囲で甚大な被害が発生するとともに、将来的には、首都直下地震や南海トラフ地震等の大規模地震等の発生が予想されている。
  • ハリケーン、集中豪雨等の風水害や地震等による被害が広範囲化・巨大化する現状において、鉄道利用者等の安全性を確保するため、日米の防災対策等に関する専門家を招聘し、災害の現状や対策の内容等を発表いただいた上で、ハード・ソフト両面の鉄道における風水害・地震対策等の今後の方向性等について、本日は御議論いただく。

(2)米国連邦危機管理庁(FEMA)・Technological Hazards Division ・Deputy DirectorのHampton H. Hart, Jr.氏から、FEMAの紹介、2017年の複数の巨大ハリケーン・アラスカ巨大地震など米国での大規模災害、防災に関する全米戦略計画(2018年〜2022年)、全米リスク・対応能力アセスメント(NRCA)、全米防災対策レポート、原油輸送に関する鉄道防災対策等について、御講演を賜った。

(3)ロサンゼルス・メトロ・Risk Management・Senior Risk Analystの Bill Douglas氏から、ロサンゼルス・メトロの紹介、地下鉄の延伸計画、大規模な森林火災・エルニーニョ現象による豪雨・洪水のリスクなどカリフォルニア州での大規模災害、洪水・地震等に対するロサンゼルス・メトロの対策、保険やFEMAの支援による災害復旧等について、御講演を賜った。

(4)鉄道総合技術研究所・防災技術研究部・地質研究室長の川越健氏から、鉄道総合技術研究所の紹介、豪雨・豪雪・強風・地震など日本の典型的な自然災害、2018年の西日本豪雨など日本での大規模災害、豪雨災害に対する現状の鉄道防災対策、気象予測の向上と豪雨に対する鉄道防災対策の強化等について、御講演を賜った。

(5)パネルディスカッションでは、以下のとおり多様な論点について議論が展開された。

  • 防災対策においては、戦略や計画の見直しが必要か検証して、自分の対応能力を向上するとともに、訓練・演習の実施が重要である。
  • 米国では、政権交代時に災害時の指揮・通信系統が変化することがある。その際、現場レベルから州レベル・国レベルへの情報連絡の体制を再確認するとともに、記録に残すことが重要である。
  • 災害対応について、悪かった点は覚えているが、良かった点は忘れやすいので、ベストプラクティスを抽出・共有すべきである。
  • 米国では、アラスカ大地震の例のように、地面が流動化することをまず認識した上で、鉄道建設の場所を検討する。一方、日本では、米国のように国土が広大ではなく、鉄道の線路を引ける場所が限られているため、鉄道建設の場所については、社会的ニーズや利便性を勘案して選定して、その上でどのように災害から守るかという発想が多いと考えられる。
  • 100年以上前の米国では、6ヵ月の計画期間で鉄道整備を開始することもあったが、現状では、建設基準や環境影響評価等により計画段階が長い。社会との透明性のあるコミュニケーションを確立すること、鉄道整備に係るリスク等を市民にわかりやすく示すことが重要である。
  • 日本の西日本地域では、3年程前から計画運休に取り組み始めたが、東日本地域では最近取り組み始めている。事前にプレスリリースを行ったが、計画運休について市民に十分に情報を伝えることが重要と考えている。社会とのコミュニケーションの在り方が、今後の課題である。
  • 鉄道利用者への情報提供については、「鉄道利用者の期待値」に応じて、提供する情報の内容を検討すべきではないか。
  • 防災情報の提供においては、「どのような災害が発生しているのか」だけでなく、「あなたは何をしなければならないのか」を伝える必要がある。また、提供する情報の「定義」を明確化することが重要であり、例えば「自宅待機」は人によって定義が異なっている状況である。
  • 鉄道利用者に対する避難・退避に関する情報提供について、1つのコミュニケーション手法では、全ての人々に情報を伝達するのは困難であり、様々な情報源が必要である。
  • 観測技術の向上とテクノロジーの積み重ねにより、災害の外力に関する予測能力を向上させ、これにより鉄道の計画運休について適切な判断を行うことが可能になると考えられる。防災対策予算は限られており、ハード面で鉄道施設を災害から守るには限界がある。
  • ハリケーン「カトリーナ」の襲来時に、ニューオーリンズでは、路面電車やバスに甚大な被害があった。当時ハリケーンの襲来は皆知っていたが、堤防が決壊するとは予想していなかった。想定外の災害について、原因、損失の規模、被害の軽減方策を、逐一考える必要がある。
  • 固定資産は移動できないため、最大限の方策で保護する必要がある一方、移動可能なものは事前に移動させる発想が重要である。
  • 防災訓練において従来規模の災害に対する演習を行うとともに、想定外の規模の災害が発生した場合の対応を想像する訓練を行うことが重要である。
  • 多様な関係者を巻き込んでのコミュニケーションを確保する防災訓練が重要である。
  • 寒冷地に関して、米国では、1964年のアラスカ大地震の発生を受け、国防総省とも連携して国家レベルの訓練を行っている。寒冷地での大地震発生後の数時間にまず何を行うのか、大規模な人員の動員や緊急物資等の輸送をどのように迅速に行うのか等の観点からの訓練である。

当日の様子


 

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