日本財団
航空セミナーの開催について「アメリカ航空産業の現状と今後の展望 〜超長距離・直行便の拡充等を受けた米国航空会社のアジア路線・ハブ戦略〜」
主催 一般財団法人 運輸総合研究所
日時 2018年11月30日(金)18:30〜20:30
会場 航空会館 7階 大ホール
参加人数 約180名
テーマ 「アメリカ航空産業の現状と今後の展望 〜超長距離・直行便の拡充等を受けた米国航空会社のアジア路線・ハブ戦略〜」
プログラム 第一部:研究報告
発表者   坂本 弘毅   運輸総合研究所 ワシントン国際問題研究所次長

第二部:パネルディスカッション
モデレーター 土屋知省   運輸総合研究所ワシントン国際問題研究所所長
パネリスト 福井秀樹   愛媛大学法文学部 教授
    水谷 淳   神戸大学大学院海事科学研究科 准教授
    坂本弘毅    

2018年航空セミナーの概要

 従来、日本、特に成田空港は、アジア・太平洋の東端に位置するという地理的特性、航空機の航続距離の限界、日本がアジア第一の経済大国であったこと等から、米国航空会社は日本を経由してアジア各国に到達する便を多く設定していた。
 しかし、近年、中国・インド等の経済発展によるアジアの航空需要の増大、アジアの大規模空港の整備の進展、長距離の運航が可能な新型航空機の出現等を背景として、米国航空会社等が長距離・直行便の運航等を拡充させている。このため、日米路線及び日本を経由してアジア各国に到達する便の位置づけが変化しており、米国からアジアへの直行便の拡充が加速していると考えられる。
 2018年に、地球半周に近い約18,000kmの航続能力を有する超長距離・新型航空機であるA350−900ULRの導入、世界最長路線となるニューヨーク−シンガポール線の就航が開始された。今後、2019年に開港予定の北京第2空港などアジアの大規模空港の空港インフラの拡張、2025年頃と見込まれている米国航空市場と中国航空市場の規模の逆転など、米国−アジア間の国際航空を巡る環境等が激変する中、航空会社間の更なる競争の激化が見込まれる。
 このような、米国航空会社のアジアへの直行便就航の推移、アジアにおける大規模空港の整備と空港間競争の激化、超長距離・新型航空機の開発等を受けた超長距離・直行便の拡充、米国3大ネットワークキャリアのアジアの路線・ハブ戦略等の現状を把握した上で、今後の課題などを明らかにしながら、米国及び日本における航空業界の展望等について議論した。

 第一部の研究報告では、運輸総合研究所の海外拠点であるワシントン国際問題研究所が行った調査・分析を基に、前半、定点観測的に毎年行っている「米国旅客航空企業の動向」について報告するとともに、後半では「超長距離・直行便の拡充等を受けた米国航空会社のアジア路線・ハブ戦略」をテーマに報告し、今後の視点や方向性として以下を提示した。

北米とアジア間の経済交流の増進、外客誘致など観光立国の実現、空港活性化による地域振興等を目指すためには、近隣アジアとの競争に打ち勝つことが必要である。インチョン空港の乗継空港としての成長が鈍化していると考えられ、今後の真の競争相手は中国の空港ではないか。
直行便の増加が進展しており、いわゆる「パッシング現象」は日本だけの問題ではなく、後背都市圏の経済力に高成長が見込めないとともに、乗継旅客への依存度が高い東アジア・中東等の空港において、「パッシング現象」が加速する可能性があるのではないか。
2037年の航空需要予測において、米国−アジア間の航空旅客数については、日米路線が依然第1位を維持すると予測されており、引き続き、日米路線を重視し、安定的に成長を持続させていく方策が必要ではないか。
中国とアジア各国間の航空需要の増加は著しく、特に、日中路線については、成長率が非常に高いと予測されており、日中路線の拡大を更に促進する方策が非常に重要ではないか。また、日本と東南アジア・インド等のアジア各国間の路線を発展させていくことが重要ではないか。
日本の航空業界の今後の方向性として、以下が考えられるのではないか。
首都圏ハブ空港戦略の推進
 
成田空港及び羽田空港については、両空港の特性を最大限活かし、首都圏空港としての航空機能を最大化することを目指す。
リニア中央新幹線の東京−大阪間開業(最速2037年予定)で想定される、東京−大阪間の航空路線の縮小を受け、国際線の増強を図る。
拠点空港・地方空港の機能強化
 
関西空港、中部空港、福岡空港、那覇空港、新千歳空港、及び地方空港におけるゲートウェイ機能を強化する(空港施設の増設・拡張、革新的な出入国審査・保安検査等の導入、二次交通の充実等)。
拠点空港及び地方空港へのLCCの就航を促進する。
直行便の拡充
 
日米路線、日中路線、及び日印路線等の更なるネットワークの強化を推進する。
特にFSCは、LCCが台頭する近・中距離路線での消耗戦を回避するため、日本発着の長距離・直行便の拡充が重要ではないか。
「北極圏ルート」の観点から、長距離直行便を検討すべきではないか。
新型航空機を活用した、超長距離・直行便(12,000km級以上)の就航先の開拓を検討できないか。
乗継需要の取り込み
 
成長が見込まれるアジアの航空需要の取り込みが重要であり、中国内陸部、東南アジア等との航空ネットワークの拡大を図る。
乗継プロセスの円滑化など、乗継利便性・快適性の向上を推進する。
更なる航空自由化の推進・公正な競争の確保
 
国際航空分野において、成田空港の「第5の自由」(現在は限定的)の開放等の、更なる航空自由化が必要ではないか。
トランプ政権による中東航空会社に対する政策を参考に、公正な競争の確保のための政策を検討する必要はないか。
インバウンド施策との連携等
 
訪日外客誘致目標(2020年:4,000万人、2030年:6,000万人)の達成に向けて、インバウンド施策と連携した、需要増が期待される国際線の新規就航や増便を推進する(長距離LCC(10,000km級)の北米線・欧州線への就航による、欧米の新規インバウンド需要の創出等)。
インバウンド・アウトバウンド両面のバランスの良い発展が重要であり、日本人の海外旅行の需要喚起を図り、アウトバウンドを促進すべきではないか。

第二部として、パネルディスカッションが行われ、

  • 超長距離・直行便については、乗客の負担、コストの制約、乗務員の問題など、現状では不透明な部分が多いのではないか。
  • 超長距離・直行便については、日本発着便では就航先が現状で考えにくく、乗継客の獲得が重要ではないか。一方、カンガルールートを運航するオーストラリアの航空会社等にとっては大きなメリットがあると考えられる。
  • 本邦航空会社にとって、FSCとLCCのブランドについて可能な限り離すこと、棲み分けを徹底することが、利益の増加につながる。
  • 国際路線においては、とにかく航空便の発着頻度を上げること、また、乗継時間を短縮することが重要である。
  • 成田空港については、現状では限定的な「第5の自由」の開放等により、以遠権路線の開拓、同空港を経由地とする長距離LCCの就航が期待できるのではないか。羽田空港については、オープンスカイの方向性に関する検討が重要ではないか。
  • 航空会社の連携においてJV(共同事業)が増加しているが、これはライバルが半減することを意味しており、航空会社間の競争がもっと必要ではないか。
  • アウトバウンドについては横這いの状況が続き、今後の人口減少等を勘案すると、増加させることは困難ではないか。一方、成田空港と地方空港、関西空港と地方空港の接続が良くなれば、アウトバウンドが増加する可能性があるのではないか。
  • 成田空港については対中国オープンスカイが、羽田空港についてはオープンスカイ+発着枠の内際転用自由化が、それぞれの空港の潜在能力をより大きく引き出すことにつながるのではないか。
など、多様な論点について議論が展開された。

当日の様子


 

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