日本財団
研究報告会 2018年秋(第44回)
主催 一般財団法人 運輸総合研究所
日時 2018年11月21日(水)13:00〜17:40
会場 海運クラブ 国際会議場(東京都千代田区平河町)

研究報告会2018年秋(第44回)の概要

 運輸総合研究所は、交通・運輸・観光の分野において「学術研究と実務的要請の橋渡し」を旨とし、政策提言や調査研究を行っています。

 研究報告会は、国土交通省の各種政策を踏まえ、関係団体、民間企業の様々な取り組みに貢献するべく開催しています。毎回、交通・運輸・観光を取り巻く重要な問題をテーマに講演・発表を行っており、研究員からの報告のみならず、国内外の運輸交通事業者のトップや研究者をお招きした特別講演を実施しています。

 今回の特別講演では、井上慎一Peach Aviation株式会社代表取締役CEOから、「Peach “The Game Changer”」と題して、御講演を賜りました。

 研究員の報告では、長距離国際線におけるLCCの拡大、都市鉄道の混雑遅延対策、運輸部門におけるAI等の活用可能性など、7本の報告を行いました。

 当日は、山上範芳国土交通省総合政策局次長に来賓挨拶を頂くとともに、大学等の研究機関、国土交通省、地方公共団体、鉄道事業者、航空事業者、その他交通事業者、コンサルタント、ゼネコン、自動車関連メーカー、報道機関などから250名を超える参加者があり、盛会なセミナーとなりました。

プログラム

開会挨拶 宿利 正史
一般財団法人 運輸総合研究所 会長
来賓挨拶 山上 範芳
国土交通省 総合政策局次長
所長挨拶 山内 弘隆
一般財団法人 運輸総合研究所 所長
特別講演 「Peach "The Game Changer"」
井上 慎一
Peach Aviation株式会社代表取締役CEO

 高い運航品質、徹底したコストマネージメント、新しいアイディアやコンセプトの導入等において差別化を図っていること、外国人観光客の取り込み等、就航地とのwin-winになる事業展開が成功の秘訣であること、国内線・国際線ともに気軽に使える移動手段の提供により、多様なライフスタイルの実現を可能にしたこと、今後もLCCのシェアの拡大が見込まれる中、従来の短距離事業に加えて、中距離事業でアジアの需要の取り組みに努め、アジアのリーディングLCCを目指すこと、等について御講演を賜った。
報告(1) 「長距離国際線におけるLCC(LHLC)の 拡大に係る研究」
橋本 安男

客員研究員 桜美林大学客員教授

 LCCによる長距離国際線は従来難しいと見なされてきたが、最近では、欧州を中心に独立系LCC/大手系LCCが長距離国際線を徐々に拡大しつつある。また、路線距離10,000km級の長距離路線も運航されてきている。本研究では、コスト分析を行い、何故LCCが10,000km級の長距離路線でも、大手航空に対し低コストの優位性を維持できるかを解き明かした。一方で、需要面での考察を行い、LCCが長距離路線で成功するためには、旅客需要を獲得する上で課題がある点についても整理した。
報告(2) 「アジア途上国都市におけるLAMAT向け配車アプリと その影響」
ポン ヴェン キェン
 研究員

 今日においてスマートフォンアプリを使った配車サービス(RHAs)の出現は、一般市民の間で歓迎されている。しかし、アジアの発展途上都市において配車アプリサービス(RHAs)がLAMAT(例えばタクシー、オートリクシャ)にとって脅威となるかどうかについては不明である。この調査ではプノンペンにてRHAsを採用したLAMATドライバーの運用サービスにどのような変化があったかを評価することで、上記の問題をケーススタディとして明確にした。日本、中国、フィリピンにおけるRHAsの規制の例とともに、政策シナリオを提案した。
報告(3) 「都市鉄道の混雑遅延対策に関する研究
 −ソフト施策の効果検証とハード施策の費用負担について−」
田邉 勝巳
客員研究員 慶應義塾大学商学部教授

 首都圏都市鉄道の混雑遅延対策に関して、時差通勤やテレワークに代表されるソフト施策の効果検証とハード施策の費用負担について分析した。本年、夏に実施された時差ビズ等の結果、改札口データからピーク率の減少が確認できるが、通勤者の具体的な行動変化やその要因は不明である。本研究では独自アンケートに基づき、企業の勤務形態や、通勤者の通勤時間の決定要因を明らかにし、今後のソフト施策の展開への示唆を得た。
報告(4) 「運輸部門におけるAI等の活用可能性に関する調査」
安部 遼祐
 研究員
 人工知能 (AI)の飛躍的な進化に近年注目が集まる中、運輸・観光分野におけるAI活用についても注目される状況にある。本調査の目的は、(1) 本分野におけるAI活用の実態を把握し、(2) 本分野のAI活用に関して今後優先して取り組むべき政策的課題ならびに調査研究課題を抽出することである。本発表では本分野におけるAI活用の進展を整理した結果をまず報告した。次に、課題の抽出に向けて有識者・実務者等を交えて行っている意見交換会での議論の途中経過を報告した。
報告(5) 「災害時における外国人に対する情報提供の現況と課題」
崔 善鏡
 研究員
 訪日外国人に対する防災対策の改善のため、情報発信者と伝達手段の現況と訪日外国人の特徴を明らかにすることを目的とする。情報提供側の自治体・メディア・観光協会等における現況と課題を事例分析とヒアリング調査を通して分析し、多言語対応を超えた情報提供のあり方を提案する。訪日外国人の特徴を分析するために独自アンケートを実施し、災害に対する知識と経験、リスク認識、情報収集の行動、シナリオにおける避難行動を明らかにした。以上の分析により、訪日外国人に対する防災対策の方向性について示唆を得た。
報告(6) 「地域観光振興組織の利活用ニーズに応じた観光統計整備のあり方
  -宿泊旅行統計を事例とした表章の詳細化と施策評価の方法論-」
清水 哲夫
 研究アドバイザー
首都大学東京大学院都市環境科学研究科観光科学域教授

 DMOなどの地域観光振興組織が施策効果を定量的に検証可能な国家観光関連統計の整備のあり方について、宿泊旅行統計を事例に提案することを目的とする。より細かい地域での表章に向けた既存観光統計とビッグデータの融合戦略の論点を提示し、宿泊旅行統計のみを用いた表章地域詳細化の方法論を提案・評価した上で、短期の大規模地域イベントを事例に、宿泊旅行統計とモバイル位置情報データを融合した地区別推計やイベント効果把握の方法論を提案・評価した。
報告(7) 「東京オリンピック・パラリンピックに向けた
 サイバー攻撃に対する人材育成に関する調査研究」  
深作 和久
 総務部企画室参事
 サイバー攻撃が世界規模で拡大している中で、2020 年東京オリンピック・パラリンピックを開催することとなるが、鉄道、航空事業者への調査(H27年度)では、セキュリティ対策を実践する人材が不足していることが分かった。こうしたことから、当研究所では、セキュリティ対策のエキスパート人材を育成することを目的としてカリキュラムを作成し、これに基づく教材を作成している。今回の発表では、教材の内容となるサイバー攻撃の事例と対策などについて報告するとともに、サイバー攻撃を外部環境リスクの一つとして位置づけることの必要性について指摘した。
閉会挨拶 春成 誠
一般財団法人 運輸総合研究所 理事長


 

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